お祝い事に贈られる花と聞いて、真っ白な胡蝶蘭をイメージする人は多いのではないでしょうか。「幸せが舞い込む」の花言葉どおり、胡蝶蘭は贈られた人に笑顔をもたらす花として日本中で愛されています。
「黒臼洋蘭園」は、今年で創業39年を迎える関東最大級の胡蝶蘭専門農園。東京にほど近いさいたま市に2,700坪におよぶ温室を構え、年間20万株もの胡蝶蘭を日本中に出荷しています。年間最大の繁忙期は毎年3月下旬から4月頭。連日深夜に及ぶ出荷作業を続ける一日に密着したシリーズの中編である今回は、現場を支えるキーマン3人に胡蝶蘭への思いを語っていただきました。
お客様に最高の胡蝶蘭を。生産責任者が語る”真剣勝負”|生産責任者 ファン・クァン・ズンさん
胡蝶蘭のクオリティの全責任を背負うズンさん。
クールな表情の中に眠る熱い思い!
最初にお話を伺ったのが生産責任者のファン・クァン・ズンさん。胡蝶蘭の大生産国のひとつであるベトナムで生まれ、今では黒臼洋蘭園が出荷する年間20万株の胡蝶蘭を生産する現場で活躍されています。
ーーズンさんは黒臼洋蘭園で働き始めて何年くらいでしょうか?たたずまいが完全に重鎮のそれに見えますが!
「今年で9年目になります。仕事内容は生産メインということになっていますが、栽培から生産、出荷まで一連の業務を一貫して見るようにしています」
ーーまさに現場の要ですね!繁忙期の時期も何度も経験されていると思いますが、毎年どんな気持ちですか?
「鬼のように忙しいですね……。胡蝶蘭は年間を通じてずっと出荷しつづけますので、暇な時期というのは基本的にはありません。しかし3月の出荷数は1万鉢以上になりますので、やはり他の月の忙しさとはひと味違いますね。本当に”鬼”ですよ(笑)」
ーー鬼ですか(笑)皆さんの慌ただしい雰囲気から忙しさを感じます。ズンさんは黒臼洋蘭園を9年見てこられて、変化を感じるところはありますか?
「生産現場の仕事の仕方はずいぶん変わりましたね。変化は少しずつですが、栽培から生産、出荷への作業の流れはどんどん改善されてきていると感じます。あとは出荷先の割合が変わったのが大きいですね。昔はほとんど市場に流していましたが、今はお客様へ直接販売する小売りがメインになりました。今では市場は3割程度です」
「顔が見えるお客様に直接届けたい」というズンさんが手掛ける胡蝶蘭たち。
ーー新井専務も小売りメインになってきたとお話されていました。生産の現場から見て、小売りメインになったことで変わったことはありますか?商品の作り方が変わったとか……?
「市場メインだった頃は、とにかく大量に生産して大量に市場に出すことを重視していました。市場では実際に買い取ってもらうまで価格がわからないので、とにかくたくさん出す必要があったんです。小売りがメインの今では、どのような方が何の目的で胡蝶蘭をお買い求めいただいてるのかがわかりやすくなりました。お客様のご希望に沿えるよう、一つ一つきれいに丁寧に見ようという意識はとても強くなりましたね。以前も決して手を抜いていたわけではありませんが、今の方が毎回真剣勝負という気持ちです」
ーーなるほど、お届け先が見えるからこそ入る気合いもあると……! しかしズンさんは生産メインなのでお客様とお会いする機会はなさそうに思えるのですが、直接何かお言葉をいただくことはあるんでしょうか?
「たとえば葉っぱに傷がついていたり、配送中に花が取れてしまったりしたときには、お客様のところへ代わりの鉢をお持ちして謝罪するクレーム対応も行います。当然、完全な商品をお届けできず申し訳ないという気持ちでお伺いしていますが、その際にお客様から『きれいな花でうれしい』と言っていただくことも多いですね。そういうお言葉をいただくたびに『一つ一つの商品を大切にして完璧な胡蝶蘭の鉢をお届けするぞ!』と気持ちが引き締まります」
ーーおお、それはすばらしいプロ意識です! とてもお客様のお気持ちを大切にしたいという姿勢が伝わってきました。いろいろ移り変わりがある黒臼洋蘭園ですが、ズンさんは今後どのように変わってほしいと思いますか?
「小売りの割合が増えてきたのと同時に、仕事に感じるやりがいも増えてきました。やっぱりお届けできるお客様の顔が見える小売りだと気合いが入ります。出来ればもっと小売りの割合を増やしていけるのが理想ですね。今は小売りと市場が7:3くらいの割合ですけど、9:1ぐらいにしていきたいなと思います! こんなこと言ったら怒られちゃうかもしれませんけど(笑)」
ーーお客様第一の姿勢がすてきです! これからも美しい胡蝶蘭をたくさん送り出してください!
直販店舗だからこそ見えるお客様の笑顔。ご縁で繋がる胡蝶蘭の輪が何よりの喜び|らんや大宮本店店長 志村静枝さん
直販ショップである「らんや」大宮本店店長の志村静枝さん!
胡蝶蘭の通信販売で名を馳せる黒臼洋蘭園のもうひとつの顔が、店頭にさまざまな種類の胡蝶蘭を取りそろえる胡蝶蘭専門店「らんや」。一般の胡蝶蘭ファンから法人・学校関係までさまざまな顧客が訪れる店舗を取り仕切るのがらんや大宮本店店長の志村静枝さんです。
ーー黒臼洋蘭園でのキャリアを教えてください!どういった経緯で黒臼洋蘭園で働くようになったのでしょうか?
「かれこれ27~8年働いています。実は社長の姉でして、当時生産や出荷のお手伝いをしていました。岩槻に分園があったときはそちらの売店と温室を両方見ていたんですが、岩槻が閉店になりましたので、今は本店の売店である『らんや』の管理全般をしています」
ーー社長のお姉様でしたか!生産から出荷、温室の管理と幅広い業務をご経験されていますが、仕事を覚えるのが大変だったのでは?
「そうですね。しかし売店にいらっしゃるお客様はいろいろな疑問を持って来られる方が多いので、胡蝶蘭に関する幅広い知識を持っていないと質問に答えられないんです。また、当然私だけが知っていればいいわけではなく、全てのスタッフが答えられるようにならないといけませんので、全員で共有できる知識を身につけられるいい経験だったと思います」
ーー売店となると、どこよりもお客様と直接接触する機会が多いと思いますが、客層や目的など、売店に訪れるお客様に変化はありましたか?
「はじめの頃は自宅に飾るためにお買い求めいただく個人のお客様が多かったですね。それからだんだんと誕生日やお祝い事に胡蝶蘭を贈りたいという方が増えてきました。今は法人のお客様も多いですね。ネット注文だけでなく、店頭に来られる方もずいぶん増えたなと感じます」
店内には色とりどりの胡蝶蘭が所狭しと並ぶ
ーー実際に店頭に来られるお客様とは何かお話をすることはありますか?
「らんや本店がある見沼区は駅から離れているせいもあり、家庭的な空気が漂う地域だと思っています。お店に来てくれるお客様も、初めての方よりもリピーターの方が多く『また来たよ』といいながら気軽に遊びに来てくれる方が多いですね。胡蝶蘭は一見敷居が高そうに見えるかもしれませんが、花は長くもちますし、翌年にはまたつぼみを付けてくれるので、実そう考えるとそれほど高くないんです。実際にライフスタイルの中に胡蝶蘭を組み込んでいるというお話も聞かせていただいています」
ーーライフスタイルの一部に花がある生活……ステキです!需要という面では個人の趣味から贈答用、そして法人へと移り変わってきたんですね。いろいろな使われ方をするようになった理由はどこにあるんでしょう?
「実は、リピーターのお客様に新規のお客様をご紹介いただくケースがすごく多いんです。また胡蝶蘭を贈られた側が、贈った側にうちの話を聞いて注文してくれたこともたくさんあります。あとは以前ご利用いただいた方が転勤先でまた使ってくれるという流れもありますね。法人だけでなく、学校の先生が異動先でご紹介いただくという話もよく聞きます。本当に人のご縁でうちの話が広がってくれているのはうれしいです」
ーーご紹介の縁、いわゆる口コミで広がるのは黒臼洋蘭園の努力が実っている成果だと思います!お客様側の需要に変化がある一方で、会社の内側では何か変化は起きましたか?
「全然変わりましたね!まず従業員の数から違います。はじめは身内だけでやる小規模の仕事でしたが、仕事の分野が増えて、それぞれの分野に携わる人が増えていきました。後から入ってくれた方はみなさんお若いので、今後どんな新しいコトをやってくれるのか楽しみですね」
ーー新井専務からも人が増えたという話は伺っていました。若い方の活躍が楽しみだと言える職場は、働く側もやりがいがありそうです!
「うちは基本的にひとりが1つの仕事だけを集中して覚えるのではなく、複数の現場で活躍できるように2つ3つと覚えてもらっています。今日はこここの現場は人が十分いるからあっちに回ろう、あそこが足りないならヘルプに行こうと自主的に動ける人が多いのがうちの強みですね。こういう人がもっと増えてくれると、もっと大きな事もできるようになるはずです。今私たちがやっていることが1だとしたら、数年後には5にも10にもなっているんだろうな、といつもワクワクしています!」
ーーお話を聞いているだけで私もワクワクしてきました! 全員が成長していった先では、黒臼洋蘭園の仕事はどのように変わっていると思いますか?
「もっと広い地域に、もっと多くの方に胡蝶蘭をお届けできるようになってほしいなと思っています。売店に来られるお客様全体のうち、今は見沼区のお客様が7割くらいを締めています。同じさいたま市でも西区や桜区の割合は少なめです。そうした地域の方にも、ここに黒臼洋蘭園があるということを知ってほしいと思っています。認知度拡大の方法は、今まさに若い人たちを中心にみんなで考えている最中です。まずはさいたま市の近隣から始め、いずれは日本中の方々に『胡蝶蘭なら黒臼洋蘭園』と認知してもらえるようにがんばります!
ーー全国に黒臼洋蘭園の名が轟く日が楽しみです!
熾烈な繁忙期は受注現場から始まる。テクノロジーの力でデータ管理に立ち向かう|受注責任者 宍戸ゆかりさん
大量の注文をさばく受注部門の責任者・宍戸ゆかりさん
年間20万株の胡蝶蘭を生産する黒臼洋蘭園にとって、決して欠かすことができない部門が受注担当です。キャリア20年のベテランである受注責任者の宍戸ゆかりさんは、お客様からのご注文を一手に引き受け生産部門へとつなぐ受注部門のリーダーとして、この繁忙期をどのように過ごしたのでしょうか。
ーー繁忙期の受注部門というだけで大変さが目に浮かぶようですが……改めてお仕事内容を教えていただけますでしょうか?
「お客様からのご注文を受け付け、生産部門への伝達からお金のやりとり、電話でのご相談、配送後のアフターフォローまで生産・配送以外の業務の大半を担当しています。注文はホームページの注文フォーム及びFAXで受けており、受発注のデータは全てパソコンで管理しています」
ーー対応する業務範囲が広い!年間20万株の受発注の管理はデータ管理じゃないと無理ですよね……?
「社長が先見の明を持ってくれているので、早々に今の注文システムを組んでくれました。電子データで管理できるようになったのは大きいですね。以前の紙ベースでの管理では、今の繁忙期の仕事は3日3晩やっても終わりそうにないですよ(笑)」
ーーテクノロジーの発展にしっかり順応していてすばらしいです!ところで、受注の殆どがネット受付というお話ですが、電話でのご相談というのはどういった用途があるのでしょうか?
「胡蝶蘭に関するご相談から注文方法の質問まで、いろいろなお問い合わせを受け付けています。今やお年寄りの方も皆さんスマホをお持ちですが、いざ注文をしようと思っても注文方法がいまいち理解できないというケースは結構多いんです。近くにお子さんやお孫さんがお住まいでない場合、気軽に相談できる相手がいないということで、お電話で注文方法をご案内させていただいています」
ーーなるほど、注文方法のガイド! 確かにインターネットに慣れていないと、入力ミスや漏れがでてしまいそうです。
「他にも『こういう時にはどのくらいの花を贈ればいいの?』という質問に回答するケースもありますね。母の日、誕生日、古希などのお祝い、法人向けと需要が広がった分、贈る側も考えなければならないことは増えているように思えます。
そうしたご案内は普段6つの電話回線で受け付けているのですが、繁忙期の時期は特に電話が多く、受付担当全員が電話にかかりっきりになってしまいます。そうなると配送への手配に手が回らなくなってしまいますので大変です。」
宍戸さんが統括する受注部門。緊張感がすごい
ーーお電話に丁寧に対応すると他に手が回らなくなりますもんね。繁忙期も電話対応が大変だったということですが、お仕事のピークは胡蝶蘭が配送される前に終わるんでしょうか?
「とんでもない! 胡蝶蘭の配送手続きが終わった後は、お客様に配送完了のメールをお送りしています。その際、実際にお送りした胡蝶蘭の写真を添付して『この商品が間違いなくお届けされますよ』とお知らせしますので、その写真の手配も行います。
繁忙期中は写真の添付サービスは一時的に停止させていただいているのですが、それでも配送完了のお知らせとデータ管理は必要ですので、配送後までピークは続きます。こういうところまでしっかり対応してこそお客様から信頼を頂けると思っていますので、受注担当は生産・配送に負けないくらい真摯に対応していますよ」
ーーお見それいたしました! 全ての工程が一丸となってお客様に胡蝶蘭をお届けしていると感じます。キャリアの中で会社の変化も見てこられたと思いますが、今後はさらにどんな変化をしていくと思いますか?
「黒臼洋蘭園の強さは、特定の人だけが高い意識を持っているのではなく、みんなが共通認識を持ちながら目標を意識しているところにあると思います。ベテランから新人まで、みんなが同じ方向を向いているのが成長する会社の条件だと思いますので、このスタンスを守っていければ自ずと会社は大きくなっていくんだろうなと思います。
私ももっと会社に貢献できるよう、ベテラン・新人問わずコミュニケーションを取りながら成長していきたいですね」
ーー会社と一緒に自分たちも成長! 会社を裏から支える強さを感じました!
黒臼洋蘭園の胡蝶蘭に「おめでとう」の気持ちを乗せて
優雅で美しい大輪の花が並ぶ胡蝶蘭は、お祝い事への贈り物に欠かせない存在です。さまざまな思いを乗せた一鉢を届けるため、黒臼洋蘭園では多くのスタッフが日々胡蝶蘭へ真摯に向き合っています。
直接伝えるにはちょっと恥ずかしい気持ちも、花と一緒ならきっと贈れるはずです。大切な思いを胡蝶蘭の花びらに乗せてお届けするお手伝いをいしています。あの人への贈り物に!とお悩みなら、ぜひ黒臼洋蘭園に相談してみてください。