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黒臼洋蘭園の歴史「生産者で終わらない」のその真意とは?

2022 8/30
特集・インタビュー
2022年5月31日

前回、黒臼さんは「生産者で終わろうと思っていない」とおっしゃっていた。その真意はどこにあるのか、そこだけお聞きしよう。

 「ある銀行さんのグランドオープンにあたり、400鉢近くの胡蝶蘭を納めさせていただいたことがありました。しばらく飾っていただいた後、私どもで鉢ごと回収したのです。ただ、ここまでやることは決して珍しくありません。

最近、東京・永田町の議員会館に大量に届いた胡蝶蘭が、飾り切れずに、包装されたまま廃棄されたというニュースがあったんです。

  すると、私どものような胡蝶蘭の生産業者のもとにも実は、『同じように花を無駄にしてるんじゃないか?』といったクレームが寄せられました。

今、SDGs(エスディージーズ)であるとか持続可能な社会など、環境について叫ばれていますよね。そういう意味で私どもも、生産者というくくりでは捉えきれない時代になっているんです」。

そんな厳しい目が注がれる中でも、業界のリーディングカンパニーとして38年間牽引し続けてきた黒臼洋蘭園。ここからは黒臼秀之さんの生い立ちを振り返っていこう。そこには運命に導かれるような様々な出来事が待っていた。

少年時代の黒臼社長7歳の頃

【少年時代の想い出】お写真:黒臼社長7歳の頃

黒臼さんの少年時代、ここは見渡す限り山と畑。「犬猫と一緒のように駆けずり回って遊んでいましたね。穴を掘ったり、木を切っちゃったりして親から怒られてました(笑)」。

もともとの家業は植木屋だ。当時はビルや公園などの公共事業が活発だった。そこで必要になってくるのが、景観を良くするための草木、いわゆる「植栽」。両親はツツジなどを作っては卸していたという。黒臼さんには上に姉が2人いる。彼自身は末っ子長男だ。仕事で親が家にいないことは日常茶飯事。それでも黒臼少年は温かい家族に囲まれて幸せだった。

少年時代の黒臼社長と上のお姉さん2人

上のお姉さん2人と

ところがある日を境に生活が一変する。 

「私が小学校6年生のとき、父親が他界したんです。43歳でした。ご近所さんからは『黒臼さんのところも大変だね』と心配されました。また『黒臼=苦労するという名前が良くないんじゃないか』ということで、名字を改名しようという話まで持ち上がってたみたいです。結局その案は立ち消えになりましたが、おふくろが一生懸命、女手1つで育ててくれました。ありがたいです」。

少年時代の黒臼社長と母多喜さん

母・多喜さんとパチリ

高校を卒業したらサラリーマンになり、母・多喜さんを楽させてあげたかったという黒臼さん。当時、就職率は抜群に高かった。若年層の働き手のことは「金の卵」とまで言われていた時代もあったほどだ。ここで、さらなる転機が訪れる。

「埼玉の川口にいる従兄弟(いとこ)が、たまたま花を作っていたんです。親と一緒にシンビジウムやカトレアを作っていました。私自身は40~50歳になったら、出戻り農業ではありませんが、休日にでも畑でもやろうと思っていたんです。すると従兄弟から『どうせ戻ってくる気があるなら最初からやったら?農業も悪くないぜ』と言われたんです」

そこに未来が、転がってた

黒臼さんは高校を卒業後、母の許しを得て埼玉県立「農業大学校」に進学。ここは、農業経営を学ぶ、全寮制の2年制の大学だった。だがそれまで農業に関しては一切やったことがなかった彼にとって「見るものすべて新鮮でした。牛も大きいし、豚も大きくて怖いんですよ(笑)」。

少年時代の黒臼社長18歳の頃

黒臼さん18歳の頃

その中でたまたま「花の教室」に進むと、温室で花を育てる楽しさに目覚める。また、ハウス栽培なら将来的に、雨や風も気にせずにできる。そして「これなら、おふくろもそこまで苦労しなくてもやれるんじゃないか」と考えたという。

研修時代の黒臼社長

そんな中、ある偶然が訪れる。

「卒業後は、パンジーやベゴニアなど、家に咲くような園芸植物を作ろうと思ったんです。でもある時、温室の棚の下に、紫色のキレイな花が転がっていた。それは、ラン科のカトレアでした。先生が鉢を持ってきてくれて植え替えて温室の中で育てたら、見事に咲いたんですよ。とにかく、いい匂いで。『先生、俺ラン作りたい』と話したら、ランの研修先を紹介してくれました」

 

これが、黒臼さんとランとの最初の出会いとなった。埼玉・桶川にあった洋蘭園に研修しに行くことになる。

研修時代の黒臼さん。このあと、胡蝶蘭の未来がこの背中に託されていく

 大川栄策さんのコサージュは小さかった?

今も一定数いるが、当時はランを育てることを趣味にしている愛好家の方が多かったという。彼らは1株がどんなに高くても買い求めるような人たち。研修先の洋蘭園でも、そうした方々のために育てていたため、かなり羽振りが良かったそう。

「学ばせてもらった方は荒井さんというんですけど、憧れの車『クラウン』に乗ってました。一眼レフのカメラも当時80万円ぐらいしたと思うんですが、ちょっと使ったら『これ駄目だから』って、また新しいカメラ買ってきて」。

 こんな興味深い話がある。かつて国民栄誉賞を受賞したことでも知られる作曲家・古賀政男氏(78年没)。荒井さんが同氏と親しくしていた縁で、古賀氏が創設した「日本レコード大賞」にカトレアを納品していたというのだ。それは、受賞者の胸につける花飾り、コサージュのためだった。

「会場は当時、青山の日本青年館ホールでしたかね。そこへ車でカトレアを積んで行ったあと、松田聖子さん、中森明菜さん、堀ちえみさん、細川たかしさんなど、歌手の皆さんために選ぶわけです。これは花が大きいから、聖子さん、これは明菜さんとか。でも大川栄策さんは小さいのでもいいか(笑)、みたいな、そんなことを言いながらやってました」

独立 母と二人三脚

研修を終えた黒臼さんは実家に戻り、母と2人で、当時人気だったカトレアやシンビジウムを、温室を建てて育て始めた。

「当時は周りからかなり珍しがられました。『あんな温室を建ててうまくいった試しはない』『日本の農業はそんな甘くない』なんて言われたり。そりゃ、そうですよね。日本がまだ稲作だ、畑だと言っているときに、花育ててるんですから」。

胡蝶蘭に悪戦苦闘

同時に黒臼さんは、胡蝶蘭の生育にも取り掛かる。

「一生懸命胡蝶蘭を作って東京の生花市場に持っていったとき、市場の人が他社さんの胡蝶蘭を見せながら、「『こういうのが良い胡蝶蘭っていうんだよ』と教えてくれました。でも、正直いいとは思わなかったんです。もちろん『わかりました』と返事だけはしつつ、心の中では『うちのと何が違うんだろう?』『絶対これより負けないもの作ってやる』と誓いました」。

ただし胡蝶蘭の原産国は東南アジア。環境が違う日本で胡蝶蘭を育てるには至難の業だった。だが、なんとかその美しい花を広めたかった。

「開花条件を整えて1年じゅう咲かせることによって、いろんなタイミングでプレゼントに選んでもらえると思ったんです。ただ温室の中といってもやっぱり夏は暑く、冬は寒い。そこで年じゅう一定の温度を保たせようと、とりあえずクーラーを入れてみたいんです。でも当時入れたのは今のような良い物ではなく、ガーガーうるさいような、風だけが出ればいいみたいなもの。周りからはやっぱり『変わり者』と思われていました」

 そもそもその頃は「胡蝶蘭なんか作ったって売れない」という風潮があった。だが、ある時を境に、胡蝶蘭が洋ランのスーパースターに踊り出る。

創業15年目の黒臼洋蘭園集合写真
創業15年目の黒臼洋蘭園

胡蝶蘭ブームの仕掛け人は山口百恵さん?

1980年、山口百恵さんが三浦友和さんとの結婚を機に芸能界を引退。その挙式で彼女が髪飾りとしてつけていたのが胡蝶蘭だった。またブーケも胡蝶蘭を使っていた。

「百恵さんが理由かどうか分からないんですが、そのあたりからなぜか胡蝶蘭の需要が伸び始めたんです。あとはバブルの影響もあったでしょうか。そこで私もどんどん温室を増やしていきました。おふくろからは『そんなに増やさないでもいいんじゃないか』と言われたんですが、他の業者さんと比べたとき、『これは結構、いい線イケるな』と胡蝶蘭作りには手応えを感じていましたから、より力を入れて行きました。まあ、少しは自分も有名になりたいとかもありましたしね(笑)」。

台湾との出会い

ただし、それまでは全て国内で一貫して胡蝶蘭を作っていたという。そんな黒臼さんのもとに、「台湾とのリレー栽培」という新たな育て方の情報が入ってくる。

これは、原産地の1つでもある台湾で苗を開花前まで栽培し、ある程度育ったら日本に空輸してきて、引き続き日本国内の生産者が栽培するというもの。苗の生育に適した台湾で無理なく育たせることで、咲いた後でも高品質の花が咲くのだという。

かつて黒臼さんは、国内でもリレー栽培をしてもらっていたこともあったが、まだクローン技術が確立していなかったこともあり、5000鉢の99%がシワシワになってしまったという。その損失は黒臼洋蘭園が全て背負いこんだ。

そんな中、耳にした台湾とのリレー栽培。早速台湾へ向かった。だが当時、台湾の業者と初めて契約するのは、ある意味“賭け”だったという。

「まず、ほとんどそんなところに行く人がいなかったし、お金の支払いの仕方だって分からなかった。当時は前金での支払いが当たり前で、それで苗が来なかったらどうしようとかそういう恐ろしさもあったんです」。

ターニングポイントだったという台湾のリレー栽培 写真は現地で培養している様子

それでも、やらないテはないと、黒臼さんは信頼がおけるような、名の通った農園のオーナーのもとに直接交渉。お互い酒を飲みながら「うちはこのぐらいの規格しか買わないよ」と、腹を割ってきちんと話し合った。そんなビジネスパートナーというよりは、“同士”のような台湾の生産者とは、かれこれ25年の付き合いがあるという。

台湾にある胡蝶蘭の苗の温室

台湾にある、胡蝶蘭の苗の温室

今、あなたが買って手にしている胡蝶蘭も、はるばる台湾から旅してきているのだ

また黒臼さんはテレビ取材を積極的に受けるようにしたり、宅配も早くからスタート。また東京にも直売店「らんや」をオープンさせた。ここでは胡蝶蘭を眺めながらティータイムを楽しめる喫茶店にもなっている。

東京・文京区小石川にある「らんや」小石川店。買うこともできるし「胡蝶蘭カフェ」

東京・文京区小石川にある「らんや」小石川店

買うこともできるし「胡蝶蘭カフェ」

「いろいろな偶然が重なって、今こうして胡蝶蘭を育ててますけど、思えば、数奇な運命ですよね」。

 

ざっと黒臼さんの半生を駆け足で振り返ってきたが、1つ言えるのは、どの出来事も、全て無駄ではなかったということだろう。

この記事を書いた人
bori

放送作家・ライター
1975年、長野県生まれ 大学在学中から放送作家として数々のテレビ番組を手掛ける傍ら、ライターとしても活動。

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黒臼洋蘭園社長秀之さんと奥様の吉恵さん

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