贈答花として知られる「胡蝶蘭」。開業や開店のお祝いとして並べられている姿を想像する方も多いでしょう。そんな胡蝶蘭、管理が難しそうというイメージはありませんか?しかし、実は胡蝶蘭の管理はとても簡単なんです。今回は、埼玉県さいたま市にある「黒臼洋蘭園」にて、胡蝶蘭の自宅での管理方法を伝授してもらいました。
胡蝶蘭は温度管理が命!胡蝶蘭に適した環境は?
胡蝶蘭を育てる前に、まずは胡蝶蘭に適した環境を知っておきましょう。
原産国は東南アジア
胡蝶蘭の原産国は、台湾、インドネシア、ベトナム、タイなどの東南アジアです。そして、東南アジアの森の中の、木にくっついています。いわゆる着生植物です。
そんな東南アジアの胡蝶蘭は
木漏れ日が差し込む
湿度がある
風通しがよい
スコールが降る
という環境のもと生息しています。東南アジアなので日本より暑い地域で、暑くて乾いていると思ったら一気にスコールが降って湿度が上がる、メリハリのある環境なのです。
直射日光はNG!木漏れ日程度の日差しが◎
胡蝶蘭を管理するには、上述した東南アジアの環境を再現する必要があります。まずは、日差しです。お伝えしたように、胡蝶蘭が生息する東南アジアの森は、木漏れ日程度の日差しが差し込みます。そのため、胡蝶蘭を育てる上で直射日光はNGです。
実際に黒臼洋蘭園にある美しい胡蝶蘭たちは、直射日光が当たらないようにハウスの中で管理されています。さらに、ハウスの天井には自動カーテンが何層もついており、木漏れ日程度の日差しにできるよう、自動調節しているのです。
この徹底ぶりから、胡蝶蘭にとっていかに直射日光が天敵なのかがわかります。
株が大きくなるのは25~30℃
次に、胡蝶蘭を育てる温度です。胡蝶蘭は、株が大きくなる温度と、花を咲かせる温度が異なります。まずは、花が咲く前に株が大きくなる温度を見ていきましょう。
胡蝶蘭の株が大きくなる温度は、25~30℃くらいです。しかし、日本で25℃以上の暖かい気候になるのは、夏くらいですよね。そのため日本で胡蝶蘭の株を大きくしようとすると、ハウスで、暖房機器をフル稼働させながら管理する必要があります。すると、非常にコストがかかってしまいます。
そこで黒臼洋蘭園では、この株の大きさになるまでの胡蝶蘭を、台湾に委託して育てているのです。
台湾なら原産国に近いため、25~30℃という環境を日本よりも容易に作れるのです。温度だけでなく、湿度や日射量も、胡蝶蘭に適した環境により近づけられます。暖房機器などの設備費も、日本ほどかかりません。
したがって、胡蝶蘭の株を台湾で育ててれば、「良く、早く、安く」胡蝶蘭の株を育てられるのです。実際に日本の胡蝶蘭の生産者の9割は、台湾に委託して株を育てています。
胡蝶蘭の株を台湾に委託したのは、実は黒臼洋蘭園がパイオニアなんだそうです。黒臼洋蘭園の社長、黒臼社長が台湾の胡蝶蘭生産者と何度も交渉をして、台湾への委託を実現させました。
温度管理が命の胡蝶蘭が日本で贈答花として主流になったのは、黒臼社長の努力があってこそですね。
花を咲かせるのは日中25℃、夜間18℃
胡蝶蘭が花を咲かせるのは、日中25℃、夜間18℃くらいです。台湾に委託して育てられた株が日本にやってくると、半年かけて花を咲かせます。そして花を咲かせるために、日中25℃、夜間18℃の温度をハウスで再現します。
実際、最初に黒臼洋蘭園のハウスに足を踏み入れたとき、思ったよりも涼しいと感じました。これは、花を咲かせるための温度を再現していたからなんですね。
ハウスには大きな冷暖房機器が設置され、さらに天井にはダクトも設置されています。
この徹底管理のもと、台湾で育てられた胡蝶蘭の株が、美しい花を咲かせるのです。
ズボラな人のほうが向いている!?胡蝶蘭の基本的な育て方
さて、ここまで胡蝶蘭を育てる環境をお伝えしてきましたが、正直「難しそう」と感じませんでしたか?そこで、黒臼洋蘭園の常務取締役、黒臼さんに、自宅での胡蝶蘭の育て方を教えていただきました。
リビングでレースのカーテン越しの窓際に置こう
胡蝶蘭を育てる環境の一つ「木漏れ日程度の日差し」。これを再現するため、自宅で胡蝶蘭を育てるときは、レースのカーテン越しの窓際に置きましょう。
これで木漏れ日程度の日差しはクリア!
次に、胡蝶蘭を育てる温度です。先ほどお伝えしたように、綺麗な花を咲かせた胡蝶蘭に適した環境は、日中25℃、夜間18℃くらいです。これだけを聞くと、この温度環境を自宅で再現するのは難しいのではないかと思いませんか?私は思いました。
しかし、黒臼さん曰く、日中25℃、夜間18℃という温度環境は、「人間が過ごしやすい環境」なんだそう。
家の中で人間が過ごしやすい温度が維持されているのはどこでしょう?
それは、リビングです。
リビングなら、人がいることが多く、冷暖房を効かせて過ごしやすくしている家が多いでしょう。
これで胡蝶蘭の温度環境はクリア!
つまり、胡蝶蘭を自宅で育てるときは、人が快適に過ごせる温度のリビングで、レースのカーテン越しの窓際に置きましょう。
長期間家をあけるときはどうする?
リビングは人が快適に過ごせる温度にしていることが多いとお伝えしましたが、旅行や出張などで、長期間家をあけるときがありますよね。当然家をあけるときは、冷暖房は消していくでしょう。
長期間家をあけるときは、夏は寝室、冬は冷えない部屋に置いておくのがいいそうです。特に夏は、猛暑で家の中が40℃近くまで上がってしまうということもありますよね。そんなときは、遮光カーテンを閉めた寝室に置いておきましょう。寝室でなくても、カーテンを閉めて外からの熱をなるべく遮れる部屋であればOK!冬の場合も、なるべく外の温度の影響を受けず、冷えすぎない部屋に置きましょう。
このように、長期で外出をするときは、胡蝶蘭を移動させておくのを忘れないでくださいね。
水は1週間~10日に1回コップ1杯が目安
次に、水やりです。水やりは、1週間~10日に1回、コップ1杯程度の水をあげましょう。
植物を育てるのに、それだけでいいの!?と思いますよね。でもそれだけでいいんです。実際、胡蝶蘭を枯らしてしまう人のほとんどが、水のあげすぎだそうです。
原産国東南アジアの環境を思い出してください。東南アジアでは、暑くて乾いていると思ったら、スコールが一気に降ります。これを再現するためには、乾いているときと水やりのメリハリが大切なのです。
そのため、毎日水をあげたくなっても、そこはグッと堪えてください!
・小見出し:あくまで目安!胡蝶蘭が水を欲しているサインは?
水は1週間~10日に1回とお伝えしましたが、それはあくまでも目安です。適した時期に水をあげるためにも、胡蝶蘭が水を欲しているサインを知っておきましょう。
胡蝶蘭が水を欲しているサインは、株が乾いていることです。
株が乾いているか確かめるときは、実際に指で水苔を触ってみます。触ったときに水苔が湿っていれば、まだ乾いていません。そのため、まだ水はあげなくて大丈夫です。一方、触ったときに湿った感じがなく、乾いていたら、水をあげるサインです。
1週間~10日を目安に胡蝶蘭の様子を見て、このサインを見逃さないようにしましょう。
さっそく胡蝶蘭を育ててみよう!
さて、胡蝶蘭の自宅での育て方を伝授していただきましたが、実際に自宅で育てられるのでしょうか?
今回は嬉しいことに、黒臼洋蘭園の美しい胡蝶蘭をいくつかお持ち帰りさせていただきました。
持って帰ってきたのはこの子たち。
わが家には娘が2人いるため、娘たちが喜びそうなピンク色の胡蝶蘭を選びました。胡蝶蘭を持って帰ると、「なにそのお花―!かわいいー!」と目を輝かせて、胡蝶蘭を見ながら絵を書いていました。
子どもにも、胡蝶蘭の美しさは伝わるんですね。
そんな胡蝶蘭たちを大切に育てるべく、黒臼さんに教えていただいた管理方法を実践していきましょう!
まずは置き場所を確保
胡蝶蘭が美しい花を咲かせ続けられるよう、まずは胡蝶蘭の置き場所を確保します。自宅での胡蝶蘭の置く場所は、
リビングのカーテン越しの窓際
でしたね。
わが家はリビングの窓際に電子ピアノが置いてあるため、その上に置くことにしました。
もう一つの小さな胡蝶蘭は、キッチンのカウンターに。ここは窓際ではありませんが「キッチンとダイニングのインテリアに少し彩りが欲しいな」という完全なる主婦の嗜好で置かせていただきました!
そして、お持ち帰りした胡蝶蘭の中でも1番大きいこの子。
「ウエディングプロムナード」という名前で、「結婚披露宴」という意味だそう。
存在感があり華やかなウエディングプロムナードは、テレビの横の窓側にドーンと置きました。部屋に一気に彩りが出て、気分が上がります。
そしてリビングの窓には午前中に日が当たりやすいため、午前中はテーブルの上に置いて明るい窓の方向に胡蝶蘭を向けています。
これですべての胡蝶蘭の置き場所を確保できました!
胡蝶蘭がわが家に来て1週間!そろそろ水やり?
胡蝶蘭がわが家に来て1週間が経ちました。胡蝶蘭の様子はどうでしょう?
この1週間、水は一切あげていません。ですが見てのとおり、こんなに綺麗に咲いています。
ここで、胡蝶蘭が水を欲しているかチェックしてみましょう。
触ってみると、少し乾いた感じがします。小さい胡蝶蘭をポットから出して株を見てみると、乾いていたら水を欲しているサインでしたね。さっそく水をあげていきます。
水はコップ1杯!
胡蝶蘭への水やりは、コップ1杯です。
ドバーッと、水苔の部分に水を入れていきます。
すると、あっという間に下の受け皿に水が出てきました。受け皿に出てきた水はそのままにせず、必ず捨ててください。
初めての胡蝶蘭への水やり、無事完了です!
胡蝶蘭がわが家に来て3週間!まだまだ元気な胡蝶蘭たち
胡蝶蘭たちがわが家に来て3週間が経ちました。変わらずに綺麗な花を咲かせてくれています。
小さい胡蝶蘭は1週間に1回ほど水をあげていますが、大きめの胡蝶蘭たちは1週間では乾いた感じがしないため、10日に1回ほど水をあげています。
管理は簡単なのに美しい!暮らしを彩ってくれる胡蝶蘭
小さい胡蝶蘭は株が小さいため、大きい胡蝶蘭よりも保水力が少なく、乾きやすいのかな?と、初心者ながらに感じています。
そして3週間胡蝶蘭を育ててみて思ったことは
胡蝶蘭の管理は本当に楽!
ということです。管理が楽なのに、胡蝶蘭たちはわが家を華やかにし続けてくれています。
胡蝶蘭の自宅での育て方をご紹介しました。「胡蝶蘭」と聞くと、どうしても「高級な花で管理が難しそう」というイメージを持ってしまいますよね。実際に私もそんなイメージを持っていました。しかしそれは、大きな間違い!胡蝶蘭は、管理が楽なのにも関わらず、綺麗な花を咲かせてくれています。育児や家事、仕事で毎日バタバタしていてズボラな私でも、育てられているのです。管理のしやすさから、プレゼントにも喜ばれるでしょう。ぜひ胡蝶蘭を自宅で育てて、暮らしを彩ってみてはいかがでしょうか。